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子どもたちの第三の居場所「ユースセンターまぁぶる」が対話で大切にしていること

ユースセンターまぁぶる(以下、まぁぶる)は、10代の第三の居場所です。子どもたちの「やってみたい」気持ちを後押しする環境を整え、今まで中高生による子ども食堂「まぁぶるkitchen」や中高生が小学生に学習支援を行う「真庭学習会」など、様々なプロジェクトが子どもたち主体で運営されています。

子どもたちのやりたいことを支援する環境や子どもたちとの対話で心がけていることなどについて、まぁぶるを運営するNPO法人manabo-de代表の森年雅子さんに伺いました。

まぁぶるでの活動内容を教えていただけますか?

まぁぶるは、子どもたちの居場所を子どもたち自身で作ることを大切にしています。子ども自身の意志で社会を変えられることや、意見が形になることを体験できる場にしたいと思っています。やりたいことを実現していく過程には、困難がつきもの。子どもたちには困難も経験してもらい、自分たちの要望を通すためにはどうしたらいいか考えて行動してもらいます。

まぁぶるはさまざまな取り組みを行っていますが、特に大きなプロジェクトが3つあります。1つ目は子どもたちが駄菓子を仕入れて販売する「駄菓子屋ときドキ」です。利用者の子どものアイディアが元となり、仕入れや売上管理も子どもたち自身が行います。店長が時々しかいないので、「駄菓子屋ときドキ」と名付けられました。

2つ目は、中高生による子ども食堂「まぁぶるkitchen」です。高校生がリーダーを務め、食品衛生責任者の資格を取得し、年間メニューも考えています。一般的な子ども食堂は大人が料理をしますが、「まぁぶるkitchen」では子どもたちが料理をします。単に食事をするだけではなく、自炊のスキルを身につけてもらうことも狙いの一つです。真庭市には、大学や専門学校がないので、多くの子どもたちが高校卒業後に市外に出ますが、一人暮らしになってから自炊する力がないと困ってしまいます。「まぁぶるkitchen」を通して、簡単なものでもいいから自炊できるようになってもらえたらと思います。

3つ目は、中高生がマンツーマンで小学生に学習支援を行う「真庭学習会」です。小学生と関わりたい、将来教師になりたい、ボランティア活動を頑張りたいという中高生が集まり、週に1回、ボランティア講師として活躍しています。最近ではリーダーの子が福武教育文化振興財団の冊子に掲載されたり、ボランティア講師の高校三年生たちが第一志望の大学に合格したりと成果が出はじめ、子どもたちの自信につながっています。

森年さんがまぁぶるを立ち上げた経緯を教えてください。

私は元々、高校の教員として岡山市で約5年間、真庭市で約8年間働いていました。その時に、教え子のなかに「進路を変えたい」という理由で高校を辞める生徒がいました。その生徒たちが、転学した後は何をしているのか全くわからなくて。「元気に過ごせているのか」「大学に行ったのか」など、知る術がありませんでした。そこで「子どもたちの人生のうちたった三年、もしくはそれ以下しか関われないのは、果たして自分がやりたい教育なのだろうか?」と考えるようになりました。

公教育と社会教育はそれぞれに強みがありますが、私の場合は、高校三年間だけではなく、小中学生時代から大学生や社会人になるまで見守る教育がしたいなと。地域で子どもを見守れる体制を作れば、切れ目のない支援を届けられると考え、高校教諭を辞めて、まぁぶるを立ち上げました。

まぁぶるはどんな雰囲気ですか?

まぁぶるは小学生・中学生・高校生・大学生の10代を中心とする子どもたちが、学校の区分や学年を超えて交流し、自然と年上の子が年下の子の面倒をみるような雰囲気があります。中学生が高校生に「高校生活ってどんな感じ何ですか?」のような質問をしている光景もよく目にします。

また、親や先生に話せないような恋愛や家族の悩みを吐露するような場にもなっています。守秘義務を守るので、「この空間だったら守ってもらえる」と思ってもらえているようです。

ユースワーカー(スタッフ)はどんな役割を担っていますか?

現在ユースワーカーには、デザイナーや保育士、カウンセラーなどの資格をお持ちの方々にお願いしています。相談に乗ったり、一緒に遊んだり、学習のサポートをしたりして、子どもたちと一緒に過ごしています。先日、高校生の利用者が、自分が志望する大学に通っていたユースワーカーに「大学について話を聞かせてもらいませんか?」と気軽に相談していました。

さまざまな職種の方にユースワーカーになっていただいているのは、子どもたちに幅広い生き方や働き方に触れてほしいと考えているからです。「田舎にいるから選択肢が狭い」「バリバリ働きたいから都会に行く」のような考え方を超えた、もっと多様性のある生き方や働き方をユースワーカーから受け取ってほしいなと思います。

子どもたちと対話する時に大切にしていることは何でしょうか?

ユースワーカーには、「その子の背景をあまり考えずに話を聞いてあげてほしい」と伝えています。例えば、不登校の子と話す場合、「この子は学校に通っていない子だから」と決めつけずに、一人の人間として向き合ってもらうようにしています。

また、学校っぽいことも言わないようにしています。TPOに応じる部分はありますが、「〜〜しなさい。」「きちんと〜〜しましょう。」のようなことは言いません。まぁぶるでは子どもたちが「やりたいことができた時に『やりたい』と言える」「やってみたいことに挑戦する」という姿勢を大切に対話をするようにしています。

その背景として、この地域では子どもの居場所が少なく、家と学校だけの往復になってしまいがちです。昔は、学校の帰りに友達と寄り道して遊ぶことができたけれども、今では安全面を考慮するがゆえにそれがあまり許されない社会になりつつあります。だから、子どもたちが無駄に集まれたり、安心して自分を表現したりする場所が必要だと思うのです。そのため、まぁぶるでは、学校っぽいことは言わず、使い方は子どもたちに委ねて、自由に使ってもらったらいいと思っています。

活動のなかで、印象に残っていることはありますか?

ある利用者のお父様は、地域活動に積極的で名前がよく知られています。その利用者は、よく「お父さんすごい人だね」と言われ、その度に「僕は父とは別の存在だ」と反発していたんです。その子が「まぁぶるでは、一人の人間として見てもらえるから居心地が良い」って言ってくれて、とても印象に残っています。

また、別の高校生の利用者が、「学校で『将来の真庭市について考えよう』という類の授業が多いけど、今の私たちは大切にされていないんですかね?」と言っていたのもハッとさせられました。「私たちは今を一生懸命生きている。今が楽しくないと未来は楽しくないのに、未来のことばかりで嫌になる。だから、(今を楽しめる)まぁぶるがあるのが嬉しい」と。私たち大人は今を大切にする姿勢が抜けてしまいがちなことに気付かされました。

まぁぶるを運営していくにあたって課題はありますか?

資金面だと思います。教育事業は利用者の子どもたちから料金をもらうわけにはいかないので、多くの教育系団体が資金面での悩みを抱えています。現状は助成金と寄付で成り立っていますが、助成金はまぁぶるのようなカテゴリーは対象外になってしまうことが多いです。なぜなら、まぁぶるのように学校に通えているような子どもたちは抱えている課題が見えにくく、支援の対象になりづらいからです。子どもたちの第三の場所は必要とされているのに、資金面ではなかなか厳しい状態が続き、現在も模索しています。

今後の展望を教えてください。

1つ目は、2026年度から通信制高校のサポート校をスタートさせます。真庭市だからこそできるオーダーメイド型のカリキュラムで、子どもたちの進路選択の一つとして機能すればと考えています。

2つ目は、まぁぶるの拠点を広げていくことです。真庭市はとても広く、交通の便が悪いエリアもあることから、現在まぁぶるがある久世まで利用したくても通えない子どもたちがたくさんいると聞いています。そこで、2026年度からキャラバン型のユースセンターを開始する予定です。遠くから子どもたちに来てもらうよりも、各地区の行政機関などと提携して、私たちが移動する方が展開しやすいのではないかと考えました。展開していくなかで、やりたいことを心に秘めている子どもたちと出会っていきたいですし、各地域ごとに異なる教育課題を把握していきたいです。

まぁぶるのような活動をしたい人たちや団体にメッセージをお願いします。

まずは、まぁぶるに来ていただければと思います。それぞれ独立して取り組むよりも、ネットワーク化して子どもたちを見守っていくのが良いと考えます。今まで教育機関や地域団体、企業などとコラボしてきた経験があり、お互いにとってウィンウィンな形でコラボができると思いますので、ぜひお気軽にご相談いただきたいです。

聞き手・執筆 吉田櫻子

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