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第11回哲学プラクティス連絡会大会 真庭市「対話カフェカード」発表レポート

2025年9月20日と21日、愛知県名古屋市の南山大学において「哲学プラクティス in NAGOYA」(第11回哲学プラクティス連絡会大会)が開催されました。

◆哲学プラクティス連絡会とは

哲学プラクティス連絡会は、2015年に発足した組織です。「対話」という方法を用いながら、哲学的なテーマについて共同で探求する活動の普及を目指しています。
一見難しそうですが、「哲学カフェ」や「こどもの哲学」、「地域や職場での哲学対話」、「芸術的表現を介した哲学的コミュニケーション」など、さまざまな実践形態が含まれています。いわば、哲学対話を実践している人たちの全国交流会です。

https://philosophicalpractice.jp/

この大会で、岡山県真庭市の「対話カフェmaniwa運営事務局」が「対話カフェカード」を紹介しました。
きっかけは、「対話カフェカード」の監修者であり、てつがくやをしている松川えりさんからのお声がけ。
「真庭市」という、いち地方自治体が哲学対話の手法を取り入れ、独自のツールを開発した事例が注目を集めている、とのことでした。

てつがくや、松川えりさんと「対話カフェmaniwa運営事務局(黒田和美・小林加奈・甲田智之)」が発表した内容をリポートとしてまとめました。

◆真庭市が目指す「共生社会」

真庭市は「真庭ライフスタイル」の実現を掲げています。
真庭ライフスタイルとは、「安心安全に暮らせるまちで、すべての人が誇りと希望を持って、自らの価値を見出しながら、互いを尊重し、暮らしていく生き方・考え方」。
支える側と支えられる側に分かれるのではなく、誰もが役割を持って活躍できる社会を目指しています。

そのために、真庭市では「共生社会推進基本方針」を策定しました。基本方針はこんな言葉で締めくくられています。

この方針はいつかなくなる時がきます。「共生社会」について、意識することがなくなるからです。そのとき、真庭市に住む人はどう生きているでしょうか。
市民一人ひとりが、年齢も、性別も、性自認も、障がいも、国籍も、人種も、そんなことを気にすることなく、生活しています。自らの価値に疑問を持ったり、他者との違いに悩むことなく、自信と誇りを持ち、他者への信頼に基づいた、社会関係の中で、自らが決めた自分の人生を幸せに歩んでいます。
そんな社会を築いていくのは、この「まち」の将来に責任を持つ今の私たちです。
この方針が必要となくなる社会に向けて、一歩ずつ前に進みます。

◆「ごちゃまぜの対話をしよう」

「共生社会推進基本方針」の実現に向けて、さまざまな背景を持ち、さまざまな分野で活動している人たちに集まっていただき、とにかく話し合いを重ねました。
何度も話し合いを重ねていくうちに、知らず知らずのうちにお互いの背景、価値観、考えを認め合うような「対話」のカタチになっていきます。
「まずはお互いを知ることから」と考え、やがて「ごちゃまぜの対話をしよう」というキャッチフレーズも生まれます。もちろん、その「対話」のなかには「人」に限らない「自然」との対話なども含まれています。

そして、真庭市では「対話」をする会。「対話カフェ」がスタートしました。

◆自然と対話がはじまる「まにわ対話カフェカード」

2023年に始まって、その年は8回。2024年には6回。そのほか「対話カフェ」から派生した「対話の場」も生まれ、たくさんの方が「対話」を体感してくれました。
しかしアンケートを実施したところ、こんな声が寄せられたのです。
「対話の会には参加したいけれど、自分で〈対話の会〉を始めるのはハードルが高い」

共生社会を推進する「対話カフェmaniwa運営事務局」としては、もっと「対話の場」が生まれてほしい。そこで「気軽に対話が始められるツールをつくりたい」と考え、てつがくやの松川えりさんに相談。
こうして「まにわ対話カフェカード」の企画に繋がっていきます。

「まにわ対話カフェカード」は、年代や立場を超えて話せるテーマが書かれたトランプ形式の対話ツールです。遊びながら対話のテーマを決められる仕組みになっています。
スペード・ハート・ダイヤ・クローバー、それぞれのマークでカテゴリに分かれています。また数字の大きさは質問の難易度に準じています。

どんな「テーマ」があるのか。一例をご紹介します。
「じぶんって何?」「苦手は克服すべき?」「友だちって何?」などなど。

ただ、「まにわ対話カフェカード」の使い方は自由です。
トランプとして楽しんでいただき、時遠見える「問い」についてちょっと思いを馳せる。それも使い方のひとつです。
また「ジジ抜き」もオススメです。カードを1枚抜き、あとはババ抜きと同じように遊びます。そして最後、手元に残ったカード1枚のテーマについて話し合う、というものです。
「眺めて選ぶ」もあります。カードを広げて「問い」を眺めてわいわいと話しながら、気になるテーマを選びます。
グループではなく、1日1枚「自分への問い」として引き、ひとりで考察を深めていく方法もあります。絵だけを見て、自分なりに問いを立てるというのもあります。

◆「今日、買って帰るつもりで来たんです」

「哲学プラクティス連絡会」当日は、実際に参加者が「まにわ対話カフェカード」を使ってはじめる対話の体験を実施しました。
「お返しって必要?」というテーマを引いたチームは、「まにわ対話カフェカード」が地方の真庭市で生まれたからこそのテーマ、という声があがり、ほかではあまり見ないローカル感のある問いを楽しんでいました。
そのほか、「便利より大事なことは?」「幸せじゃなきゃいけない?」など、テーマ選びがスムースで、活発な対話が交わされました。
以下、参加者の声です。

「真庭市で生まれたというのが面白い。例えば、岡山以外の都道府県でこれをつくったら、それぞれ違う問いを持つカードになるのでは」
「最初トランプとして遊ぶのが、アイスブレイクの役割を果たしていて、自然と対話に入っていくことができました」
「今日、買って帰るつもりで来たんです」
「眺めているだけでも、楽しいですね」
「無地のカードを追加して、書き足せるようにしたい」などなど

カードの柔軟性と発展性を評価していただきました。
「まにわ対話カフェカード」は、2つの願いから生まれたツールです。「いつか共生社会という言葉がなくなればいい」そして「対話が日常になればいい」です。
その2つを実現できる「可能性」を、今回の紹介のなかで感じました。

◆対話を可視化する「グラフィックレコーディング」

今回の講義のなかで、対話を深める「グラフィックレコーディング」の説明も行ないました。絵と文字と図を組み合わせて、対話を可視化するグラフィックレコーディング。
とくに真庭市で開催している「対話カフェ」では、ライブでグラフィックレコーディングが描かれており、対話の内容が俯瞰しやすくなっています。
面白い点のひとつは、「だれがしゃべったか」ではなく、「なにがしゃべられたか」にフォーカスできるという点です。
「だれがしゃべったか」が意味を為さないのは、真庭市はじめ、地方特有の人間関係のしがらみを超えていくために、とても必要な要素です。

ちなみに、真庭市で開催された「対話カフェ」のすべての「グラフィックレコーディング」を担当してきた小林加奈さんが、「まにわ対話カフェカード」のイラストも担当しています。

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