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農家・大塚さんが実践する読書会と「対話カフェカード」による対話

真庭市の農家である大塚雅史さんは、読書会「清友ケンジ夜間大学」や、「対話カフェカード」を用いた対話会を定期的に開催。大塚さんの活動には、共生社会に向けたヒントが詰まっています。

今回は、大塚さんの活動を深掘りし、読書会や対話の会の価値を探っていきます。

大塚さんが仲間達と行っている読書会「清友ケンジ夜間大学」について教えてください。

「清友ケンジ夜間大学」は、農家仲間である清友健二さんをはじめとする読書好きの仲間達と一緒に約5年前に始めた読書会です。毎月第3水曜日の夜、6人ほどで集まり、自分の読んだ本を持ち時間約20分で紹介します。紹介後は、各々の感想などをあーだこーだと話し合い、いつも3時間ほどあっという間に時間が過ぎています。

清友さんは、小説から一般書まで読む本の守備範囲が広く、しかも読む量がとても多い読書家。清友さんを学長に見立てて、読書会を「清友ケンジ夜間大学」と名付けました。

参加者が紹介する本は小説や教養本などさまざまで、最近ではジェンダーや埋葬の本が紹介されました。私の場合は、最近「ユダヤ人の歴史」にハマっていたので、3か月間ずっと「ユダヤ人の歴史」について語っていました。私は一度興味を持ったら、そのジャンルの本を読みまくるというスタイルなのです。

一人で読書するのも良いですが、それで終わるのはもったいない。読書していると頭の中にさまざまな世界が広がっているわけです。本で得た学びや考えたことを他人と共有することは、お互いを刺激しあうことになると思っています。

冬の読書会はこたつを囲みながら

読書会で大切にしていることは何でしょう?

私自身は「個々の読書ライフが豊かになること」が一番大切だと思っています。参加者が紹介してくれる本の内容や説明に関心を注いで、面白がる姿勢が大切なのかと。

取材班が訪れた会では、偶然にも3人が埋葬についての本を選んでいた

読書会の参加者の変化を感じられることはありますか?

あります。私自身もですが「人に伝えることを念頭に読書すると、より深く読める」と参加者は実感しています。「どのように伝えるか」を考えながらの読書と、一人で完結するのは、違うものです。

また、読書会の回を重ねるごとに、参加者同士の仲が深まっていくのを感じます。というのも、自分がどんな本を読んでいるかを開示することは、自分の恥ずかしい部分を開示することでもあり、それをお互いに見せ合うと自然と相手と仲良くなれるからです。多くの人が「本棚を見せてください」と言われたら、「恥ずかしくて見せられない」と答えるでしょう。読書会では、そんな部分を開示し合うので、相手を深く理解できるような気がします。

一人の持ち時間20分だが、話が盛り上がるので時間が収まらないこと多々

大塚さんは「対話カフェカード」の活動もされているそうですね。その活動内容を教えてください。

「対話カフェカード」は、「てつがくやさん・哲学プラクティショナー」の肩書きを持つ松川えりさんを監修に迎え、共生社会を推進する行政と民間が作ったカードで、カードに書かれたテーマについて参加者同士が対話します。例えば「ともだちってなに?」「健康じゃないとだめ?」「伝統って大事?」「自然=あるがまま」などのテーマがあります。

トランプと同じように数字とマークが書かれ、ハートは「対人関係に関わるテーマ」、ダイヤは「社会に関わるテーマ」、クローバーは「SDGs的なテーマ」、スペードは「個人に関わるテーマ」とざっくりとジャンル分けされています。小さな数字ほど子どもも理解できるようなテーマ、大きな数字ほど言葉としては難しいテーマです。かと言って、小さな数字のカードが対話が簡単というわけではありません。スペードのAは「じぶんってなに?」というテーマ。言葉としては簡単ですが、哲学的でどのように対話を始めてよいのか難しいテーマです。

「否定的なことを言わない」「共通の結論に至る必要はない」「途中で自分の意見が変わってもよい」というルール的なものはあるものの、カードのルールはまだ固まっていません。ジジ抜きで最後に残ったカードのテーマにするのもよし、参加者の気になるテーマを選んでもよし。「対話カフェカード」でさまざまな立場の人が安心して語り合える場をひらくことを目指しています。

私は「対話カフェカード」のルール作りワークショップに参加して以来、1日1回誰かと「対話カフェカード」で対話しています。元々人と話すのが好きな性格なので、このカードに夢中です。

私と一対一で対話したある方が、「対話カフェカードで遊ぶと、お互いの考えていることがわかり、自己紹介になるね」と仰っていました。多くの人は自己紹介に職業や肩書きなどの属性を用いますが、このカードで遊べば自分の内面を話すことになるので、飾らない自分を紹介することになります。

哲学的な要素を含む「対話カフェカード」

「対話カフェカード」で大切にしていることは何でしょう?

私は対話カフェカードを使っていく中で何度か失敗をしています。

私は対話のファシリテーションの修行中の身です。ファシリテーターとは参加者の考えを引き出し、自分なりの答えを見つけてもらうことが役割だと考えています。

にもかかわらず、対話をしている中でそのときにひらめいた言葉をつい言ってしまうことがあります。これは、参加者が自分なりの答えに至るプロセスを奪ってしまうことになる可能性があります。

また、私は、人に対する興味が強すぎるのか、ついプライバシーに踏み込みすぎるなど、人が触れられたくないことを質問してしまったり、ちょっとデリカシーが足りないところが災いしたことがあります。というわけで、プライベートな話題になったときには注意が必要です。

大人も考えさせるテーマ

「対話カフェカード」のどんなところに価値を感じますか?

今まで小学校の職員室や金融機関の窓口などさまざまな場所で「対話カフェカード」を紹介がてら使ってきました。多くの方に楽しんでもらい、「職員会議で使ってみたい」「学校で児童に使わせたい」というご感想をうかがったり、なかには「職場の研修会で使ってみたいので講師に来てもらえませんか?」というお誘いまで頂きました。

日常生活ではなかなか対話はできないと思いますし、苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか。その理由の一つに、一人ひとり言葉の定義が異なることが挙げられます。例えばお金があれば幸せ?」というカードがありますが、「幸せ」という言葉の定義は、人によって様々です。お互いの言葉の定義が違うことを一致さ理解せずに話すと、話が噛み合わなくなってしまいます。それぞれの言葉の定義の違いがどこにあるのかを探っていくことが対話の役割のひとつです。対話する力を高めていくことで、市民社会がより良くなっていくと信じています。

「対話カフェカード」で対話する大塚さん

今後、取り組んでいきたいことはありますか?

農家での納品などの外回りの際に、知り合いを見つけては、すかざずポケットから対話カフェカードを取り出し対話をしてしまい、なかなか畑に戻らないので、パートさんに叱られることがしばしばあります。

しかし、私自身これからも「対話カフェカード」で対話していきたいですし、対話のファシリテーションができる人を増やしていきたいです。学校や公民館、地域の集会所、職場など色々な所で子どもからお年寄りまで使えるようになり、対話のコミュニティが増えていけばいいなと思っています。

「対話カフェカード」は、お互いの違いを見つけるチャンス

最後に、大塚さんのように読書会や対話会を開きたい人に向けてメッセージをお願いします。

まずは身近な人とやってみることをおすすめします。 読書会や対話会は楽しいことが大切。ご自身が一番楽しんでください。 このような読書会や対話会が別の人主体でどんどん立ち上がってくれることを願っています。

誰よりも「対話カフェカード」を楽しむ大塚さん

聞き手・執筆 吉田櫻子

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